スキー・スノーボードのウェアを新調する季節。ショップやネットを見ると、悩ましい選択が待っています。
- 片や、上下で10万円を超える「GORE-TEX」などの高級ウェア。 店員は「一生モノですよ」「-20℃でも快適です」と言う。
- 片や、上下セットで2万円台で買える、流行デザインの「安価なウェア」。 「どうせ汚れるし、毎年デザイン変えたいからこれで十分かも」とも思う。
「10年使えるなら、結果的に高級ウェアの方が安い?」 「安物買いの銭失いになったらどうしよう…」
この記事では、スキー・スノボ歴20年の筆者が、この「ウェア論争」に終止符を打ちます。 「機能性」「デザイン」「寿命」、そして「10年間のトータルコスト」まで徹底比較し、あなたが選ぶべき1着を導き出します!
結論:あなたの「滑走日数」と「目的」で決まる
いきなり結論から言います。どちらがお得かは、あなたが「どう滑りたいか」で決まります。
- 【年10回以上】本気で滑る・快適さを求める → 迷わず「中級〜高級ウェア」を。理由は後述する「汗冷え」対策。
- 【年1〜3回】仲間と楽しむ・流行を追いたい → 「安価なウェア」で全く問題なし。ただし、天候には注意。
この記事では、なぜこの結論になるのか、両者の「真実」を深掘りします。
「高級ウェア」の世界(GORE-TEX、[ak]など)
- 価格帯: 5万円〜15万円(上下セットで10万円超え)
- 代表ブランド: Burton [ak]、Patagonia、Goldwin、ARC’TERYX など
- 公式サイト:
メリット:最強の「快適性」
高級ウェアの価値は「暖かさ」ではなく、「濡れない・蒸れない(防水透湿性)」にあります。
- 「汗冷え」しない: これが最大のメリット。滑走中に体から出た汗(蒸気)を、GORE-TEXなどの素材がウェアの外に逃してくれます。 その結果、リフトに乗っている間に汗で濡れた肌着が冷えて凍える「汗冷え」が起こりません。
- 絶対に「濡れない」: 大雨や、ベチャベチャの湿雪の中で1日中滑っても、外からの水は一切侵入しません。
- 耐久性: 生地の素材、ジッパー、縫製(シームテープ)が頑丈で、数年使ってもヘタりません。
デメリット:初期投資と「幻想」
- 初期投資が非常に高い: 上下で10万円超えは覚悟が必要です。
- 「10年使える」は幻想?: この後解説しますが、「10年使える」は、ほぼ幻想です。
「安価なウェア」の世界(上下セット1〜3万円)
- 価格帯: 上下セットで1万円〜3万円台
- 代表ブランド: スキー場近辺の量販店モデル、ネット専売ブランドなど
メリット:安さと「トレンド感」
- 圧倒的な安さ: 初期投資が低い。浮いたお金をリフト券代や交通費に回せます。
- デザイン・流行: その年のトレンドを反映したデザインが豊富。毎年「新しい服を着る」感覚で、気軽に買い替えられます。
デメリット:機能性の「限界」
- 「耐水圧10,000mm」の真実: 新品のうちは良いですが、1日の後半や悪天候時(雨や湿雪)には、縫い目や生地表面から水が染みてきます。
- 致命的な「透湿性の低さ」: これが最大の弱点。汗(蒸気)がウェアの外に逃げません。 結果、アウターの内側が自分の汗でビショビショになり、リフトで「汗冷え」を起こします。-10℃の世界で濡れた服を着ているのと同じ。非常に危険です。
- 耐久性: ジッパーが壊れやすい、生地が擦り切れやすいなど、1〜2シーズンで寿命が来ることが多いです。
【核心】「10年使える」はウソ?ウェアの「本当の寿命」
「GORE-TEXなら10年」を信じてはいけません。ウェアの寿命は「生地」ではなく、「シームテープ」と「撥水性」で決まります。
- シームテープの寿命(3〜5年): ウェアの縫い目の裏には、防水のために「シームテープ」というテープが貼られています。これは接着剤で付いているため、着用回数に関わらず、経年劣化で3〜5年で剥がれてきます。 これが剥がれたら、縫い目から水が入り放題。高級ウェアもただの布になります。
- 撥水性の寿命(1〜2年 ※ただし回復可能): 表面の「水を弾く力」は、洗濯や摩擦で落ちます。これは市販の撥水剤で復活させられますが、メンテナンスは必須です。
結論:「10年使える」はウソ。 (※完璧なメンテと修理を続ければ別ですが…) 高級ウェアであっても、高性能を維持できるのは現実的に「5年」が限界と考えましょう。
徹底比較:10年間の「トータルコスト」と「快適さ」
では、10年間で結局いくらかかるのでしょうか?
パターンA:高級ウェア(12万円)を5年ごと買い替え
- 1年目:12万円
- 6年目:12万円
- 10年間の総額:24万円
- 10年間の快適さ:★★★★★(最高)
パターンB:安価なウェア(3万円)を2年ごと買い替え
- 1年目:3万円
- 3年目:3万円
- 5年目:3万円
- 7年目:3万円
- 9年目:3万円
- 10年間の総額:15万円
- 10年間の快適さ:★☆☆☆☆(低い) (常に濡れ・蒸れ・汗冷えのリスク)
パターンC:中級ウェア(6万円)を4年ごと買い替え
- 1年目:6万円
- 5年目:6万円
- 9年目:6万円
- 10年間の総額:18万円
- 10年間の快適さ:★★★★☆(かなり高い)
結論:あなたに最適なのはこれだ!
シミュレーションの結果、トータルコストは「安価ウェア」が最安ですが、「快適さ」は最低です。 一方、「高級ウェア」は最高に快適ですが、コストも最高です。
そこで、筆者が最も推奨する「現実的な最適解」はパターンCです。
【筆者の最強推奨プラン】 「5万円〜8万円の中価格帯ウェア(GORE-TEXではないが、耐水圧・透湿性20,000mmレベル)」を、自宅で洗濯・撥水メンテナンスしながら「3〜5年」で買い替える。
- 理由:
- トータルコスト(18万)が、高級ウェア(24万)より安い。
- 安価なウェア(15万)とコストは近いのに、快適さは天と地ほどの差がある。
- 「耐水圧・透湿性20,000mm」あれば、日本のゲレンデ(湿雪が多い)では十分すぎる性能。
- シームテープの寿命(3〜5年)と買い替えサイクルが一致し、無駄がない。
「10年使える」という幻想は捨て、高性能なウェアを「快適なうち」に買い替えていく。 これが、現代のスキー・スノーボードにおける最も賢く、お得な選択です。
【パターンC】(5〜8万円の中価格帯)を探すならココ!
この「コスパと性能のバランスが取れた中級ウェア」を探すには、2つの賢い方法があります。
1. 「型落ち(旧モデル)のハイエンド品」を狙う
- 狙い目: 昨シーズンや一昨シーズンの「GORE-TEX」や「耐水圧20,000mm以上」のモデル。
- 解説: 性能は最新モデルとほぼ同じなのに、「型落ち」というだけで価格が30%〜50%OFFになっています。12万円だったウェアが6万円で買えることも。シーズンイン直前(今!)が、一番在庫が豊富な時期です。
- おすすめサイト:
- モリヤマスポーツ (モリスポ) オンラインストア: (老舗専門店。旧モデルの在庫が豊富)
- 楽天市場「旧モデル スキーウェア」検索: (ポイント還元も狙うなら最強)
2. 「コスパ系ブランド」の「ハイエンドモデル」を狙う
- 狙い目: 価格は安いが、耐水圧20,000mmなど高性能をうたうブランド。
- 解説: GORE-TEXなどの有名素材は使っていなくても、独自の高機能素材で十分な性能を持つブランドが近年増えています。新品でも上下5万円以下で揃うことが多いです。
- おすすめサイト:
- OC STYLE(PONTAPES, namelessage): (Amazonや楽天で人気のネット専売ブランド。耐水圧20,000mmを超えるモデルも多い)
- ONYONE (オンヨネ) 公式サイト: (日本の老舗ブランド。高品質ながら、トップブランドより価格が抑えめなモデル(ONS)などがある)
まとめ
「10年使える」という幻想は捨て、高性能なウェアを「快適なうち」に買い替えていく。 これが、現代のスキー・スノーボードにおける最も賢く、お得な選択です。

