ドロミテの空に描かれる新たな神話
2026年2月、雪と氷に覆われた北イタリアの景勝地、ドロミテ渓谷に世界中の視線が注がれます。第25回冬季オリンピック競技大会、ミラノ・コルティナダンペッツォ大会の開幕です。その中でも、最も華やかであり、かつ最も繊細な神経戦が繰り広げられる競技、それが「スキージャンプ」です。
私たち日本のファンにとって、スキージャンプは単なる一つの競技種目を超えた特別な意味を持っています。1972年札幌大会、笠谷幸生選手らによる表彰台独占という「日の丸飛行隊」の伝説的な飛翔。1998年長野大会、原田雅彦選手が吹雪の中で見せた「ふなきぃ…」と祈る姿、そして団体の金メダル。そして記憶に新しい2022年北京大会、小林陵侑選手が圧倒的な強さで手にした個人金メダル。これらの栄光は、私たちの記憶に深く刻まれています。
しかし、2026年のミラノ・コルティナ大会は、これまでのオリンピックとは一線を画す「変革の大会」となります。女子競技における「ラージヒル」の歴史的採用、そして男子団体戦に代わる新種目「スーパーチーム(ペア戦)」の導入など、競技の根幹に関わるルール変更が行われました。これにより、勝負の綾はより複雑になり、個の力だけでなく、ペアとしての総合力や戦略性が問われることになります。
本レポートは、来たるべき決戦の日に向け、スキージャンプ競技の全てを網羅した「究極の観戦ガイド」です。会場となるプレダッツォの風の癖から、最新のルール変更、日本代表「日の丸飛行隊」の詳細なプロフィール、そして立ちはだかる世界のライバルたちの動向まで、膨大な資料と現地情報を基に徹底的に分析しました。これを読めば、テレビ観戦が100倍楽しくなるだけでなく、選手たちがテイクオフするその瞬間の緊張感を、我がことのように感じられるはずです。
聖地「プレダッツォ」の全貌と攻略の鍵
ヴァル・ディ・フィエンメの至宝「ジュゼッペ・ダル・ベン」
スキージャンプとノルディック複合の舞台となるのは、北イタリア・トレント自治県に位置するヴァル・ディ・フィエンメ(Val di Fiemme)のプレダッツォ(Predazzo)です。ここには「ジュゼッペ・ダル・ベン(Giuseppe Dal Ben)」の名を冠したジャンプ競技場があります。
この地は、1991年、2003年、そして2013年と、過去に3度ものノルディックスキー世界選手権を開催した実績を持つ、まさにジャンプ界の「聖地」の一つです。歴史あるこの会場ですが、2026年のオリンピックに向けて大規模な改修工事が行われ、最新鋭の設備へと生まれ変わりました。特に注目すべきは、ジャンプ台のサイズアップです。現代のジャンプ技術の進化に合わせ、より遠く、よりダイナミックな飛行が可能になるよう設計が見直されました。
ヒルサイズ(HS)とK点の変更:より巨大に、より遠くへ
2026年大会に向けた改修により、ジャンプ台のプロファイル(形状)は以下のように変更されました。これは、単に飛距離が伸びるだけでなく、選手に求められる技術的特性も変化することを意味します。
| 項目 | ノーマルヒル (NH) | ラージヒル (LH) |
| 旧スペック | HS 104m / K 95m | HS 135m / K 120m |
| 新スペック (2026) | HS 107m / K 98m | HS 141m / K 128m |
| インラン角度 | 32度 | 32度 |
| テイクオフ角度 | 11.0度 | 11.5度 |
| テイクオフ長 | 6.44m | 7.08m |
| 完成年月 | 2025年7月 | 2025年7月 |
ラージヒル(HS141)の脅威
特筆すべきはラージヒルの巨大化です。ヒルサイズ(HS)が141mに達したことで、ワールドカップ屈指の巨大ジャンプ台であるドイツ・ヴィリンゲン(HS147)やフィンランド・ルカ(HS142)に匹敵する規模となりました。HSが大きくなるということは、それだけ空中に滞在する時間が長くなり、後半の「伸び」が勝敗を分けることを意味します。
K点が128mに設定されているため、メダル争いをするにはコンスタントに135m〜140mの飛距離が求められます。この距離域では、着地時の衝撃も凄まじく、テレマーク姿勢(足を前後に開く着地)を決める技術と勇気が試されます。
ノーマルヒル(HS107)の繊細さ
一方、ノーマルヒルもHS107mへと拡大されました。ノーマルヒルは一般的に、絶対的なパワーよりも、テイクオフのタイミングや空中への移行動作といった「繊細な技術」が重要視されます。わずかなミスが命取りになるため、トップ選手でも予選落ちの危険性がある、非常にスリリングな台と言えます。
「魔物」が棲む風の谷
プレダッツォは山岳地帯の谷間に位置しているため、特有の風の癖があります。これを読み解くことが、コーチ陣と選手にとって最大の課題となります。
- 時間帯による変化: データによると、午前中は風が穏やか(約5-10km/h)ですが、夕方から夜にかけて風速が増す(約15-20km/h)傾向があります。オリンピックの本戦は主に午後から夜にかけて行われるため、予選やトレーニングとは異なる風の条件下で飛ぶことになります。
- 回る風: 谷地形の影響で、風向が安定せず、突発的に横風や追い風が吹くことがあります。スキージャンプにおいて「向かい風」は浮力を生むため有利ですが、「追い風」は体を地面に叩きつけられるような作用があり極めて不利です。この風の息遣いを読み、スタートの合図を出すコーチの判断力(シグナル)が、メダルの色を分ける重要なファクターとなります。
- 標高の影響: プレダッツォは約1000mの標高に位置しています。空気が薄いため、空気抵抗が減り助走速度は上がりますが、同時にスキー板が受ける浮力もわずかに減少します。平地のジャンプ台とは異なる感覚へのアジャストが必要です。
競技フォーマットの大革命とルール完全解説
ミラノ・コルティナ2026は、スキージャンプの歴史において「革命」とも呼べる変更が実施される大会です。長年親しまれた伝統的な種目が姿を消し、新たな興奮を呼ぶフォーマットが登場します。
実施種目:全6種目の詳細
今大会で行われるスキージャンプ競技は、以下の計6種目です。男女の機会均等化が進み、女子にも待望のラージヒルが追加されました。
| 日程 (現地) | 種目名 | 注目ポイント |
| 2/7 (土) | 女子 ノーマルヒル個人 | 開幕戦。高梨沙羅ら日本女子のメダルラッシュに期待。 |
| 2/9 (月) | 男子 ノーマルヒル個人 | 小林陵侑の連覇がかかる一戦。技術力が問われる。 |
| 2/10 (火) | 混合団体 | 男女2名ずつ。北京での無念を晴らす雪辱戦。 |
| 2/14 (土) | 男子 ラージヒル個人 | バレンタイン決戦。最もダイナミックな飛行が見られる華の種目。 |
| 2/15 (日) | 女子 ラージヒル個人 ★新種目 | 初代女王の座をかけた歴史的一戦。女子ジャンプの進化を証明する場。 |
| 2/16 (月) | 男子 スーパーチーム ★新種目 | ペア戦。日本最強コンビが世界の頂点を目指す。 |
さらば4人制団体、ようこそ「スーパーチーム」
最大の変更点は、1988年カルガリー大会から続いてきた「男子団体(4人制)」の廃止と、それに代わる「男子スーパーチーム(2人制)」の採用です。
なぜ変更されたのか?
従来の4人制団体は、ジャンプ強豪国(オーストリア、ドイツ、ノルウェー、日本など)以外にとって、ワールドカップレベルの選手を4人揃えることが難しく、参加国が固定化されがちでした。2人制にすることで、選手層が薄い国(イタリア、アメリカ、フィンランドなど)にもメダルのチャンスが生まれ、競技全体の競争力を高める狙いがあります。
スーパーチームの過酷なルール
この新種目は、単に人数が減っただけではありません。その競技フォーマットは極めてタフです。
- チーム構成: 各国2名。
- 3ラウンド制: 通常の団体戦は2回のジャンプで競いますが、スーパーチームは3回飛びます。
- 第1ラウンド: 全エントリーチームが出場。上位12チームが通過。
- 第2ラウンド: 12チームで競い、上位8チームが通過。
- 決勝ラウンド: 残った8チームで最終決戦。
- 勝敗: 2名 × 3本 = 計6本の合計ポイントで決定。
- 戦略性: 1人のミスも許されません。4人制なら1人の失敗を他の3人がカバーできましたが、2人制でしかも3本飛ぶため、安定感が何より重要になります。また、短時間で3本飛ぶため、選手には急激なリカバリーと集中力の維持(スタミナ)が求められます。
女子ラージヒル個人の衝撃
これまで女子はノーマルヒル1種目のみでしたが、ついにラージヒルが採用されます。 女子ジャンプのレベルは近年飛躍的に向上しており、ワールドカップでもラージヒルやフライングヒル(さらに巨大な台)での競技が定着してきました。高梨沙羅選手や伊藤有希選手といった経験豊富なジャンパーにとって、技術と度胸がより反映されるラージヒルの追加は追い風となります。初代女王のタイトルは、永遠に歴史に残る栄誉です。
観戦力が上がる!採点システムの基礎知識
スキージャンプは「飛距離」と「美しさ」を競うスポーツですが、そこに「風」と「ゲート」の要素が加わり、少し複雑な計算式で順位が決まります。これを知っておくと、テレビの画面表示がより深く理解できます。
合計得点 = 飛距離点 + 飛型点 ± ウィンドファクター ± ゲートファクター
- 飛距離点 (Distance Points)
- K点(建築基準点)まで飛ぶと60点が与えられます。
- そこから1メートルごとに加点・減点されます。
- ラージヒル (LH): 1mにつき 1.8点。
- ノーマルヒル (NH): 1mにつき 2.0点。
- 例:ラージヒルでK点(128m)を超えて138m飛んだ場合、+10m × 1.8点 = 18点が加算され、飛距離点は78点となります。
- 飛型点 (Style Points)
- 5人の審判員が、空中姿勢や着地の美しさをそれぞれ20点満点で採点します。
- 最高点と最低点を除いた3人の合計(最大60点)が採用されます。
- 最も重要なのは着地の「テレマーク」です。足を前後に開き、腕を広げてバランスをとる姿勢が決まらないと、1人あたり2〜3点減点されます。合計で10点近い差がつくこともあり、大ジャンプでも着地失敗でメダルを逃すケースは多々あります。
- ウィンドファクター (Wind Compensation)
- ジャンプは向かい風を受けると遠くへ飛び、追い風だと落ちます。この不公平をなくすための補正点です。
- 向かい風(有利): 点数が引かれます(マイナス)。
- 追い風(不利): 点数が足されます(プラス)。
- 画面上で「Wind: -5.4」とあれば、かなり良い向かい風をもらったため5.4点引かれたことを意味します。逆に「Wind: +10.2」なら、強烈な追い風の中で耐えたため10.2点のご褒美をもらったことになります。
- ゲートファクター (Gate Compensation)
- 危険なほど飛びすぎる場合、審判団(ジュリー)はスタート位置(ゲート)を下げます。また、コーチが戦略的に下げる要請をすることもあります。
- ゲートを下げると助走速度が落ちて不利になるため、その分点数が加算されます。
- 逆に、風が弱くて誰も飛べない時にゲートを上げた場合は、点数が減点されます。
日本代表「日の丸飛行隊」・精鋭たちの肖像
2026年、日本チームは「史上最強」との呼び声高い布陣でイタリアに乗り込みます。各選手の詳細なプロフィールと、今大会にかける想いを紐解きます。 ※以下のメンバーは、調査時点(2026年2月)でのワールドカップ成績やスニペット情報に基づく予想を含みます。
【男子代表】 少数精鋭の侍たち
1. 小林 陵侑 (Ryoyu Kobayashi) 〜空を統べる絶対皇帝〜
- 生年月日: 1996年11月8日(29歳)
- 出身: 岩手県八幡平市
- 所属: TEAM ROY
- オリンピック実績: 2022北京 NH金・LH銀
- プレースタイル: 彼は現代スキージャンプ界の「皇帝」です。特筆すべきは、空中での圧倒的な加速力。テイクオフ直後は低空を進みながら、サメが獲物を狙うように後半で鋭く伸びる飛行曲線は、世界中の解説者を唸らせます。 2018-19シーズンにワールドカップ年間総合優勝とジャンプ週間全勝優勝(グランドスラム)を達成して以来、常に世界のトップに君臨し続けています。プロ転向後は、自身のチーム「TEAM ROY」を立ち上げ、既存の枠にとらわれない活動を展開。メンタルの強さは折り紙付きで、どんな悪条件でも動じずに「ビッグジャンプ」を揃える修正能力は世界一です。 今大会では、ノーマルヒル連覇はもちろん、北京で銀に終わったラージヒルでの雪辱、そして新種目スーパーチームでの金メダルという「三冠」を視野に入れています。
2. 二階堂 蓮 (Ren Nikaido) 〜覚醒したサラブレッド〜
- 生年月日: 2001年5月24日(24歳)
- 出身: 北海道江別市
- 所属: 日本ビール
- 実績: 2025-26シーズン ジャンプ週間インスブルック優勝
- プロフィール: かつての名ジャンパー・二階堂学氏を父に持つサラブレッドが、ミラノ・コルティナのシーズンについに覚醒しました。2025-26シーズンのジャンプ週間インスブルック大会でのワールドカップ初優勝は、世界に衝撃を与えました。 彼のジャンプは、教科書のように美しい基本技術が持ち味でしたが、そこに近年「力強さ」が加わりました。特に空中後半の粘りが増し、飛距離が安定。小林陵侑選手と組むスーパーチームでは、彼がどれだけ小林選手に迫るジャンプができるかが、日本の金メダルの鍵を握ります。いま最も勢いのある若武者です。
3. 中村 直幹 (Naoki Nakamura) 〜笑顔のフライング・ラボ〜
- 生年月日: 1996年9月19日(29歳)
- 出身: 北海道札幌市
- 所属: フライングラボラトリー (Flying Laboratory)
- 実績: スキーフライング世界選手権団体 金メダルメンバー
- プロフィール: 「世界一楽しそうに飛ぶ男」。カメラに向かって常に笑顔を見せるその姿は、観る者を幸せにします。しかし、その笑顔の裏には、自ら会社(フライングラボラトリー)を設立し、スポンサー営業からトレーニング計画まで全てを一人でこなすという、並外れた自立心とハングリー精神があります。 独自の理論に基づいたトレーニングで年々飛距離を伸ばしており、特に巨大な台(フライングヒル)での強さは特筆ものです。2026年シーズンのスキーフライング世界選手権では、日本チームの歴史的金メダルに大きく貢献しました。ムードメーカーとして、そして頼れるポイントゲッターとして、チームに不可欠な存在です。
【女子代表】 黄金世代の集大成
1. 高梨 沙羅 (Sara Takanashi) 〜不屈のレジェンド、4度目の正直〜
- 生年月日: 1996年10月8日(29歳)
- 出身: 北海道上川町
- 所属: クラレ
- 実績: ワールドカップ通算63勝(歴代最多)
- ストーリー: 彼女のキャリアは、栄光と苦悩の連続でした。ワールドカップ通算63勝という前人未到の記録を持ちながら、オリンピックの金メダルだけが彼女の手元にありません。ソチで4位、平昌で銅、そして北京では混合団体でのスーツ規定違反による失格という悪夢を味わいました。 しかし、彼女は諦めませんでした。ルール変更や世代交代の波に揉まれながらも、ジャンプスタイルを改良し続け、今なお世界のトップランカーとして君臨しています。新種目ラージヒルは、彼女の豊富な経験と技術が最も活きる舞台。4度目の挑戦で、悲願の「金」をその首にかける瞬間を、日本中が待っています。
2. 伊藤 有希 (Yuki Ito) 〜風を味方にする美しき職人〜
- 生年月日: 1994年5月10日(31歳)
- 出身: 北海道下川町
- 所属: 土屋ホーム
- プロフィール: チーム最年長にして、今なお進化を続ける「レジェンド」葛西紀明選手の愛弟子。彼女のジャンプの最大の武器は、その「美しさ」です。空中でピタリと止まるような安定したV字フォームは、高い飛型点を叩き出します。 また、彼女は「勝負師」でもあります。風の条件が荒れたり、プレッシャーのかかる場面でこそ真価を発揮するメンタルの強さを持っています。高梨選手と共に長年日本女子ジャンプを支えてきた彼女もまた、個人の金メダルを虎視眈々と狙っています。
3. 丸山 希 (Nozomi Maruyama) 〜遅咲きの大輪、今が全盛期〜
- 生年月日: 1998年6月2日(27歳)
- 出身: 長野県野沢温泉村
- 所属: 北野建設
- 実績: 2025-26シーズン開幕戦リレハンメル優勝
- プロフィール: 今、最も勢いに乗っているのが丸山選手です。長年、怪我に苦しむ時期もありましたが、2025-26シーズン開幕戦でついに悲願のワールドカップ初優勝を達成。そのままサマーグランプリでも総合優勝を争うなど、完全にブレイクを果たしました。 高い身体能力を生かしたダイナミックなテイクオフが持ち味で、現在の充実ぶりはチーム随一。「メダルに最も近い存在」との呼び声も高く、今大会のシンデレラガールになる可能性を秘めています。
4. 勢藤 優花 (Yuka Seto) 〜笑顔のムードメーカー〜
- 生年月日: 1997年2月22日(28歳)
- 出身: 北海道上川町
- 所属: ヤマチューン
- プロフィール: 高梨選手と同郷・同級生であり、長年苦楽を共にしてきた戦友。明るいキャラクターでチームの雰囲気を良くするムードメーカーですが、ジャンプの実力も確かです。コンスタントに予選を突破し、ポイントを稼ぐ安定感は団体戦において非常に重要。今大会の公式トレーニングでも好調なジャンプを見せており、上位進出を狙います。
世界の強豪たちと「ペニスゲート」疑惑
メダル争いは日本チームだけで行われるわけではありません。世界には強力なライバルたちがひしめいています。そして今大会、欧州勢を中心に前代未聞のスキャンダルが影を落としています。
1. スロベニア:驚異の「プレヴツ一家」
今大会の主役候補は、間違いなくスロベニアのプレヴツ兄妹です。
- ドメン・プレヴツ (Domen Prevc): プレヴツ三兄弟の末っ子。独特の深い前傾姿勢から繰り出す「超攻撃的」なスタイルで、2025-26シーズンのワールドカップ総合首位を独走しています。彼が波に乗った時の飛距離は、誰も止めることができません。
- ニカ・プレヴツ (Nika Prevc): 女子ジャンプ界の若き女王。2023-24シーズンに総合優勝を果たし、今シーズンも絶好調。兄譲りのビッグフライトで、高梨沙羅らの前に立ちはだかります。
2. オーストリア:最強の鷲軍団
選手層の厚さでは世界一。誰が出ても金メダル候補です。
- シュテファン・クラフト (Stefan Kraft): ワールドカップ通算表彰台記録を更新し続ける「生きる伝説」。どんな風でもミスをしない精密機械のような安定感は、一発勝負の五輪で最大の脅威です。
- ヤン・ヘール (Jan Hoerl): プレダッツォのラージヒルで夏に142mの丘記録(サマー)を叩き出した、この台のスペシャリスト。スーパーチームではクラフトとの最強ペア結成が濃厚です。
3. ノルウェー:「ペニスゲート」と揺れる強豪
スキージャンプ大国ノルウェーですが、今大会前には競技の根幹を揺るがすスキャンダルに見舞われました。
- マリウス・リンドヴィク (Marius Lindvik) & ヨハン・アンドレ・フォルファン (Johann Andre Forfang): 北京五輪金メダリストを含む主力選手たちが、2025年世界選手権での「スーツ不正操作」に関与したとして一時資格停止処分を受けました。
- 「ペニスゲート (Penisgate)」疑惑: さらに衝撃的だったのは、ドイツの大衆紙『Bild』などが報じた疑惑です。ジャンプスーツの股下の寸法を有利にする(表面積を増やして浮力を得る)ため、身体測定時に「ヒアルロン酸を性器に注入してサイズをごまかした」という、にわかには信じがたい手法が取り沙汰されました。 WADA(世界アンチ・ドーピング機構)も調査に乗り出す事態となりましたが、処分が解除されれば彼らの実力はトップクラス。このスキャンダルが精神面にどう影響するのか、あるいは開き直って強さを見せるのか、世界中が注目しています。
- エイリン・マリア・クヴァンダル (Eirin Maria Kvandal): 女子では彼女が脅威です。怪我からの復帰後、圧倒的な飛距離を見せており、プレダッツォのトレーニングでもトップを記録しています。ただし、着地に不安があるため、飛型点での勝負がカギとなります。
全6種目・詳細スケジュールと見どころ
ここでは、各種目のスケジュールと、日本時間での観戦ポイントを整理します。
※イタリアとの時差は-8時間。現地時間の午後は、日本のゴールデンタイムから深夜にあたります。
1. 女子 ノーマルヒル個人
- 決勝日時: 2026年2月7日 (土) 14:45〜(日本時間 22:45〜)
- 展望: 大会初っ端のメダル種目。高梨、伊藤、丸山、勢藤の4名が出場予定。ここでメダルを獲得できれば、日本チーム全体に勢いがつきます。プレヴツ(スロベニア)、クヴァンダル(ノルウェー)との三つ巴の戦いが予想されます。
2. 男子 ノーマルヒル個人
- 決勝日時: 2026年2月9日 (月) 13:00〜(日本時間 21:00〜)
- 展望: 小林陵侑の大会連覇がかかる一戦。ノーマルヒルはミスが許されない「精密さ」の勝負。わずかなタイミングの遅れが命取りになります。予選から好調を維持できるかが鍵。
3. 混合団体
- 決勝日時: 2026年2月10日 (火) 12:45〜(日本時間 20:45〜)
- 展望: 男女2名ずつ、計4名の総力戦。北京五輪では高梨選手の失格がありながらも4位に食い込みました。今回はルール厳格化に対応済み。日本は男女ともにエース級が揃っているため、金メダルの有力候補です。スロベニア、オーストリア、ドイツとの激戦必至。
4. 男子 ラージヒル個人
- 決勝日時: 2026年2月14日 (土) 12:45〜(日本時間 20:45〜)
- 展望: バレンタインデーに行われる、ジャンプ競技の「華」。HS141の巨大な台で、140mに迫るビッグジャンプが連発するでしょう。小林陵侑、二階堂蓮の真骨頂である「フライング技術」が最も輝く種目です。
5. 女子 ラージヒル個人 ★新種目
- 決勝日時: 2026年2月15日 (日) 12:45〜(日本時間 20:45〜)
- 展望: 歴史的な初代女王決定戦。女子選手にとって、ラージヒルでのオリンピック開催は長年の悲願でした。高梨沙羅が、そのキャリアの全てをぶつけて挑む、最大の見せ場となるでしょう。
6. 男子 スーパーチーム ★新種目
- 決勝日時: 2026年2月16日 (月) 13:00〜(日本時間 21:00〜)
- 09:00 トライアルラウンド
- 10:00 第1ラウンド (全チーム)
- 10:43 第2ラウンド (12チーム)
- 11:20 決勝ラウンド (8チーム)
- 展望: 大会を締めくくる新種目。日本は「小林陵侑・二階堂蓮」の最強ペアでのエントリーが濃厚。3本勝負という過酷なフォーマットで、最後まで集中力を保てるか。オーストリア(クラフト&ヘール)、スロベニア(ドメン&ペーターまたはラニセク)との一騎打ちになるでしょう。
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ミラノの空に舞え、ニッポンの翼
2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピックは、スキージャンプ競技にとって新時代の幕開けです。巨大化されたプレダッツォのジャンプ台、戦略性を増したスーパーチーム、そして女子ラージヒルの導入。これら全ての要素が、かつてないドラマを生み出す舞台装置となります。
日本代表「日の丸飛行隊」は、ベテランの経験と若手の勢いが完璧に融合した、史上稀に見る好チームに仕上がりました。小林陵侑という絶対的エースを擁し、二階堂蓮や丸山希という新星が脇を固め、レジェンド高梨沙羅が精神的支柱となる。金メダルを含む複数のメダル獲得は、決して夢物語ではありません。
しかし、勝負の世界に絶対はありません。「ペニスゲート」のような予想外の騒動や、当日の気まぐれな風が、運命を左右することもあるでしょう。だからこそ、面白いのです。
選手たちがスタートバーから飛び出し、時速90kmで空へ身を投げるその瞬間。私たちファンもまた、彼らと共に空を飛ぶ気持ちで応援しましょう。プレダッツォの夜空に、いくつの日の丸が掲げられるのか。歴史的瞬間は、もうすぐそこまで来ています。
がんばれ!ニッポン!
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